こんにちは。神戸やすらぎ訪問マッサージです。
寝たきりの状態や、活動量が低下した状態が続くことで心身の機能が衰える「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」。その中でも、特に深刻な問題となるのが、関節がカチカチに固まって動かなくなる「関節拘縮(こうしゅく)」です。
今回は、関節を支える「腱(けん)」や「靭帯(じんたい)」の性質と、廃用症候群を防ぐためのアプローチについてお話しします。
なぜ腱や靭帯は「一度固まると治りにくい」のか?
筋肉は血管が豊富で代謝が早いため、衰えてもリハビリで戻りやすい性質があります。しかし、腱や靭帯は「血管が極めて乏しい」組織です。血流が少ないため、必要な栄養が届きにくく、細胞の入れ替わり(代謝)が非常に遅いという特徴を持っています。
そのため、動かない状態が続くと、腱や靭帯を構成するコラーゲン繊維の並びが乱れ、急速に縮んで硬化(線維化)してしまいます。これが関節拘縮の正体です。一度完全に固まってしまった結合組織を元に戻すのは、医学的にも容易ではありません。
※線維化のメカニズム:動かない状態が続くと組織内の水分やヒアルロン酸などの潤滑成分が減少し、繊維同士の距離が縮まり、本来交わるはずのないコラーゲン繊維同士がランダムに接触し、接触した部分で異常な結合が形成され、繊維の方向性がバラバラになり、組織が短縮して固まる(=拘縮・線維化)。
廃用症候群に抗うための「食事(栄養)」の役割
「血管が乏しいなら、食事を変えても意味がないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、答えは真逆です。
寝たきりなどで動かないことによって、分解・変性が進んでいる局面で材料が足りないと、質の良い組織へ修復・再生ができず、硬い組織(線維化)のまま固定化されてしまいます。
腱や靭帯の柔軟性を維持し、これ以上の硬化を防ぐためには、コラーゲン合成の材料となる以下の栄養素を食事から絶やさないことが重要です。
①タンパク質(アミノ酸):組織のベースとなる材料
②ビタミンC:コラーゲン繊維を強固に結びつける補酵素
③微量ミネラル(鉄・亜鉛・銅):代謝を円滑に回すための必須要素
食が細くなり、これらの微量栄養素が不足すると、腱や靭帯の劣化(廃用)はさらに加速してしまいます。
食事以外にも大切な事
単なるマッサージでは拘縮は防げない
食事だけでなく、外的アプローチも必要です。ただ、マッサージという仕事をしている身としてもどかしいのですが、単に筋肉を揉んだりさすったりするだけのマッサージでは、関節の固まりを防ぐことは難しいです。
動かさない状態(不動)が続くと、腱や靭帯の線維化が進行します。進行を止めるには、皮膚の上からのマッサージではなく、関節そのものを動かして、腱や靭帯をしっかりと引き伸ばす「ストレッチ」や「機能訓練(運動療法)」が必要不可欠です。筋肉や神経に対して「緩みなさい」という正しいサインを送るアプローチが必要です。
1日30分の機能訓練(リハビリ・筋トレ)よりも、23時間の過ごし方
ただ、それでも線維化の進行を防ぐのは容易ではないです。厳しいかもしれませんが、「1日のうち数十分ストレッチや機能訓練やリハビリを頑張った」としても、残りの時間をずっと同じ姿勢で寝て過ごしていれば、やはり関節の固まりを防ぐことは難しいです、、、
大切なのは、食事や着替えなど、生活の中で関節を「使う」機会を増やすことです。自分でできること自分で行なう。ベッド上でもできることはあります。確かに寝たきりでは活動量が減ってしまうのは事実ですが、関節拘縮を防ぐ近道はありません。
まとめ
真に廃用症候群を防ぐために必要なのは、以下の3つです。
【食事】:新しい組織の修復材料となる「タンパク質」や「ビタミンC」「微量ミネラル(鉄・亜鉛など)」をしっかり補給し、脆く硬いコラーゲンへの置き換わりを防ぎます。
【ストレッチや機能訓練】:関節を動かし、縮もうとする腱や靭帯に「張力(伸ばす刺激)」を与えます。
【生活への定着(ポジショニング)】:寝ている時や座っている時の姿勢を工夫し、関節が縮んだまま固定されるのを防ぐ。食事や着替えなど、生活の中で関節を「使う」機会を増やす、これが一番大切です。
マッサージ師として施術の時間だけ関節を動かすだけでは、本当に関節拘縮を防げるとは言えません。訪問時の「機能訓練」や「ストレッチ」を通じて関節に適切な刺激を届けることはもちろん、ご家族様やケアマネジャー様と連携し、「普段の寝姿勢の工夫」や「食事への配慮」までアドバイスを行うことを大切にしていきたいと考えています。
寝たきりを防ぎ、痛みの出にくいしなやかなお身体の維持をサポートいたします。お身体の強張りや関節の硬さでお悩みの方は、いつでもお気軽にご相談ください。
